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イコライザー/ものすごく病んでてありえないほど強い

Posted by arnoldkillshot on 30.2014 映画タイトル:あ行 0 comments 0 trackback
『イコライザー(原題:The Equalizer)』
2014年 アメリカ
監督:アントワーン・フークア
出演:デンゼル・ワシントン、クロエ・グレース・モレッツ、マートン・ソーカス、メリッサ・レオ、ビル・プルマン、デヴィッド・ハーバー 他

あらすじ:
ホームセンターに勤務するロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)は、同僚みんなから愛され頼りににされる穏やかな紳士。しかし彼の夜は孤独だった――人もまばらなダイナーでティーバッグと本を持って眠れない夜をやり過ごす。その夜、同じくダイナーの常連である年端もいかない娼婦テリー(クロエ=グレース・モレッツ)と初めて言葉を交わしたマッコール。魂に傷を持つ者同士、心を通わせる二人だったが、ある時テリーが売春の元締めであるロシアンマフィアによって重症を負う。彼女を救うため、たった一人でマフィアに立ち向かうマッコール……後に残されたのは悪人たちの凄惨な死体だった。ロシアからやってきたボス直属の始末屋テディ(マートン・ソーカス)が事の処理に当たるが、彼らは自分たちが敵に回した人物の恐るべき正体をまだ知らなかった……
感想:
80年代TVシリーズ『シークレット・ハンター(原題:The Equalizer)』を原案に、人知れず悪を討つ凄腕の必殺仕置人的ヒーローを描いたクライムアクション。法で裁けぬ悪を討つ、昼の顔は仮の姿で夜は無敵のヒーロー、と男のロマン満載な作品ですが、ホラー映画の殺人鬼並みの殺しのシーンとデンゼル・ワシントンの鳥肌ものの演技によって、そう単純な作品にはなりませんでした。騎士のいない世界で騎士道を貫くドン・キホーテが狂人であるように、正義のない世界で正義を貫く主人公もまた狂人に他ならない、という危うさが、一見単純明快な勧善懲悪の物語を何倍にも魅力的にしています。個人的にはここ十年くらいのデンゼル作品で最高傑作。

デンゼル演じる主人公、ロバート・マッコールは勤勉なホームセンターの従業員。気さくで包容力があり、仲間の誰からも慕われています。しかし一人でいるときの彼はひどく孤独。不眠症の彼はいつも人気のないダイナーで夜をやりすごします。強迫観念から儀式のようにフォークやナプキンを並べる風変わりで孤独なこの男が、何を注文するでもなく家からティーバッグを持ってきても、店主は何も言わず湯を注ぐ。店主のそんな心意気が傷ついた魂を引き寄せるのでしょう――彼が店で出会ったのはあどけなさの残る姿にどぎついファッションをまとう幼い娼婦テリー。お互い癒しようのない心の傷を持った二人はつかの間の安らかな時間を過ごすのですが、テリーは元締めのマフィアに暴行され病院送りにされてしまいます。ボロボロになった彼女を見て、マッコールは単身恐ろしいロシアンマフィアに戦いを挑み、テリーの自由とささやかな夢を守ろうとします。

このあとスカッとするほどの暴れっぷりで悪党たちに当然の報いを与えていくわけですが、彼自身はスカッとした表情どころか常に死んだように穏やかです。宣伝では「昼の顔と夜の顔」という言い方をしていますが、むしろ彼の普段接する友人たちに対する態度と悪党たちに対する態度は同じで、同僚のデブの試験対策をしながら「君ならやれる」というのと同じテンションで、マフィアに対し制裁を加える前に悔い改めるチャンスをやる。ですが、その恐ろしいほどの穏やかさとは裏腹に、殺し方は残酷極まりない。ガラスで…!店のハンマーで…!穴あけドリルで……!銃よりもそのへんのもので戦うのを得意とするマッコールの殺し方は、ジェイソン並みにバリエーションに富んでいて、そのどれもがものすごく痛そう。ロシアからやってきた始末屋テディも、彼を追ううちにそのヤバさに気付いてこんなことを言います、"Everything about him is wrong(あいつは何もかもが狂ってる)"。

そうなんです。彼にとって正義とは病的な衝動。劇中では強迫性障害という言葉すら出てこずデンゼルの静かな演技だで表現していますが、彼は恐ろしく病んでいる。ものがあるべき場所になければならないという強迫性障害と同じ原理で、マッコールは善悪の報いが正しくなされなければならないという考えに取りつかれている。彼の正義は正しい人間であろう、と自分で選び取る観念ではなく、もうどうしようもなくそうせずにはいられない、そうしないといられない性質のものなんです。その証拠が、終始暗くよどんだデンゼルの目。友人相手に陽気に笑って見せる時も、マフィアに正面切って直談判する時も、狙い通り悪党を片付けた後も、彼の目は死んでいる。超絶殺人スキルを持つ彼にとってどんな巨悪もゴキブリ程度でしかなく、一切動じることなく片づけられるというのもありますが、何よりゴキブリを殺して喜ぶ人間はいないということです。

マッコールがそのへんのものやDIY用品で人を殺すのも、彼の病を暗示していると思います。精神疾患はたいていの人が見過ごす要素を鋭敏に受け取ってしまうことから始まるものですが、マッコールも同じで、身近にあって人が平然と接しているものが本当はいかに危険であるかわかってしまうのでしょう。とがったもの、燃えるもの、木に穴をあけるものが、人に向けられたら危険でないはずがない。男を悦ばせる商売には女の犠牲がつきものであるように――でもたいていの人が見過ごす。そうして見過ごされるものをダイレクトに受け取ってしまうマッコールの優しさ・純粋さが、彼をさらに病ませていく。地獄とは言わないまでも、正義のないこの世界は彼にとって潔癖症の人のそれと同じで、片づけなければいけない汚いもので溢れている。だから劇中の暴れっぷりにテンション挙がりまくりの観客に対し、マッコールの目だけは終始暗く沈んでいるんです。これをトム・クルーズ様がやったらナルシシズム全開の爽快なヒーローになっていたかもしれませんが、デンゼル演じるマッコールは全然自分を好きじゃない。それどころかそんなふうに考えてしまう自分が病んだ人間だということも知っている。しかし、だからこそ、彼の正義は自分のためでも世界のためでもない、病的なまでに純粋なものなのです。

※以下ネタバレ(反転)※
実はクロエ・モレッツ演じる娼婦テリーはマッコールが動き出してから完全に姿を消し、以降ヒロインらしいピンチもなく(ピンチになるのは同僚のデブ(男)だった)ラストでやっとピンピンした姿で再会するのですが、確かにマッコールのスキルをもってすれば彼女を守るのに大勢殺すリスクを冒す必要はないんです。だからマフィアを潰したのはテリーを守るためではなく、自分の(病的な)正義感のためだけだったんですよね。その時点で潔白なヒーローとは言えないことをしているマッコールなのですが、何と言っても有刺鉄線で首をつったり穴あけドリルで脳ミソ貫通させたりしていたラストバトルで、彼はもうヒーローであることを放棄してるんだな、と感じました。完全にホラーの殺し方ですもん。全く死んだ目をして自分の手で死んでいく相手を見つめるデンゼルの姿に、この人物の取り返しのつかない深い魂の傷を見た気がして涙が出てきました。

正義のない世界の正義はひどく病んでいる。しかし自分が殺した大勢の悪党ではなく、自分の手で救うことができた人の幸せな姿を見て、マッコールは少しだけ楽になる。まだ目は死んだままですが、最後に彼は少しだけ自分を許せたんだと思います。「あるべきではない」病んだ自分が、誰かの力になれたことを知ったから。こう考えると『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の必殺仕置人版っぽいお話です。

男のロマンあふれる単純なオヤジ・アクションを、時代の中の精神の深みについての物語にまで掘り下げたデンゼル・ワシントンの演技にとにかく脱帽。クロエ・グレース・モレッツもやはり巧くて、この二人がダイナーで語るたわいもないシーンで泣きそうになりました。あとラストバトルで流れるザック・ヘムジーの"Vengeance"が最高。ここ数年で一番カッコいい戦闘シーンでした。


以上、『イコライザー』のレビューでした。
『名探偵モンク』に次ぐ強迫性障害ヒーローの登場に胸が熱くなりすぎて深読みしすぎた感がある
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