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脳男/感情を超越した人間は、真の善悪測定器となりうるのか?

Posted by arnoldkillshot on 15.2013 映画タイトル:な行 0 comments 1 trackback
『脳男』
2013年 日本
監督:瀧本智行
原作:首藤瓜於『脳男』
出演:生田斗真、松雪泰子、江口洋介、二階堂ふみ、太田莉奈、染谷将太、夏八木勲、石橋蓮二 他


あらすじ:
世間を震撼させている連続爆破事件を捜査する茶屋刑事(江口洋介)は、爆弾魔のアジトで一人の男を逮捕する。鈴木一郎(生田斗真)と名乗るその男は、精神科医の鷲谷真梨子(松雪泰子)の精神鑑定を受けるが、真梨子は脳波レベルで完璧に計算された鈴木の受け答えに疑問を抱く。真梨子は独自に鈴木の素性を調査していくが、やがて鈴木は完璧な頭脳と身体能力をもちながら、生まれつき感情を持たず、そのため犯罪を憎む祖父に正義の執行者として育てられたということを知る。そして爆破事件の真犯人・緑川紀子(二階堂ふみ)もまた躊躇なく人を殺せる鈴木に関心を持ち、彼の命を狙う。
感想:
悪いヤツには報いを受けてほしいというのが、多くの人が願うこと。しかし人間には感情があるから善悪の判断は主観で歪められているし、報いを与えたいと思っても良心がとがめるし、悪を成敗したくてもトム・クルーズやシュワちゃんのような非現実的な強さもない――それが人間の限界です。しかしそれらの限界をクリアした人間を仮定すれば、彼は真の善悪測定器となりうるのか?そして人間の感情は、その采配を受け入れられるのか?それが『脳男』のテーマ。そして主人公の脳男こと鈴木一郎こそ、人間の限界を超えた善悪の采配者です。

感情とはいわば精神の感触。動物のモフモフはさわり心地がよく、針でぶっ刺せば痛みを感じるのと同じで、外部からの刺激に対し心が受け取る信号が感情なのです。しかしこの鈴木一郎という男、肉体の痛みを感じないだけでなく感情もない。だから彼は肉体的にも精神的にも無痛症の人間なのです。痛みは肉体の限界を知らせるサインなのだから、痛みを感じないということは限界がないのと同じ。だからなんでも記憶できるし、肉体の限界もない。そして何より、感情に邪魔されず判断ができる彼には、正しい判断が下せる……のか?

これはかなり哲学的な問題です。「この世に人間しかいない!」と埴谷雄高はよく言ったものですが、少なくとも我々が生きる人間の世界には神はいないわけで、つまり絶対的な采配者が存在しないのです。だから脳男が下す裁きがいかに正当なものであろうと、人間感情がそれを受け入れられるかどうかで、彼が正義の使者か非情な殺人鬼かで見方が分かれてしまいます。茶屋刑事はまさにその「正義か悪か」の判断で、精神科医の真梨子は「人間かそれ以上の存在か」の判断で揺れ動きます。

一方、爆弾魔の緑川は、容赦なく人を殺せる同類として脳男に執着します。はなから判断もクソもなく、悪を実行する緑川は、正しいこと以外実行しない脳男と鏡合わせの存在です。そう、実は脳男は善悪の采配者というより、むしろ悪だけに反応して抹殺する、一方通行の正義なんですよね。彼は悪を抹殺する=正義と教え込まれてきたので、それ以外に正しい道があるということは知らない。だから彼をあくまで「人間であって人殺しのために生まれてきたんじゃない」と信じるヒロインの真梨子に、まだ知らない感情を動かされるのでしょう。彼女の見方は、神にも似た脳男の裁きを前にして見過ごしてきた我々に、大切なことを思い出させてくれます。脳男が正義か悪かはわからない、ただ人間であることは揺るぎない真実だということを。それでもやはり、彼が正しいかどうかの判断は観客自身がすべきだと思います――ただし、彼が時に間違いを犯す人間であるということも考慮に入れて。

ちなみに(超人間嫌いの)私の(かなりうがった)考えでは、この人間世界に神がいないからこそ神様の代わりをする人間がいてもいいと思います。脳男が殺しているのは明らかな悪人なんだし、正義の鉄槌が下されて悪い気がしない人なんていないでしょ?さらに言えば、この映画の悪人はみな人を犠牲にしまくっている、議論の余地のない悪人しか出てこないので、脳男の裁きがいかにも正しいことのように描かれていますが、じゃあ悪に脅かされている人間がみな罪のない子羊か?……といえばそうでもない。冒頭のバス爆破だって、乗っていた人の中にはセクハラしてるおっさんもいたかもしれないし、炭になった子供だって学校では誰かをいじめていたかもしれない。その時そうでなくったって、生き延びていたらそうなっていたかもしれないじゃないですか。殺人は人生と共に罪も終わらせてくれるけど、殺さない程度の罪は生きている間ずっと続く。そんな罪を死で終わらせられるなら、人殺しはそんなに悪いことでもないんじゃないか?だとしたら殺人者を裁いて〝罪のない〟人々を救うのは間違ってるんじゃないか?人間にできない判断ができる脳男さんに、そのへんのことを語ってほしかったです。

あまり邦画を見ない私ですが、この作品はかなり楽しめました。それはこの作品が『ドラゴン・タトゥーの女』や『SAW』シリーズといった洋画の明らかな影響下にあるからでしょう。恋する眉なし爆弾魔・二階堂ふみ(とレズ関係にある手下)はモロにドラゴン・タトゥーな女だし、冒頭で彼女が被害者に爆弾を取り付けるシーンの、あの見覚えのある金属感は……『SAW』に他ならない!だけどパッと見は高機能自閉症のサヴァン症候群で、しかも映像記憶能力がある脳男の方が、実はリスベットに近いのかもしれません。また、邦画はこういうダークヒーローものに馴染みがないはずなのだけど、最近『アウトロー』とか『ゴーストライダー』とか見ているせいで、見慣れない感じはまったくしませんでした……それにサヴァン症候群を引き合いに出すまでもなく、この世にはドルフ・ラングレンという実在の超人がいるので、脳男の超設定もそんなに無理があるとは思わなかったです。映画の見すぎですね。あと、エンディングで大音響でキンクリ聞けてよかった。


以上で『脳男』のレビューを終えます。
ラストシーンの後、脳男はきっとサイコ教師ハスミンを裁きに向かったのでしょう……次回作『脳男VS悪の教典』にひっそり期待します。

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